On Your Mark
歩いて五分ほどしたところで、僕は一本の木の下に辿り着いた。

レイがあの教室がお気に入りならば、ここは僕のお気に入りの場所だった。

両手を回しても届かないくらい太い幹に寄り掛かり、僕は自分の考えをなるべく正確に整理しようとしていた。



何故、三十年も誰も立ち入りしていないこの第四防衛ラインに、僕たち三人が配備されたのだろう。

ユーシチールがここを攻めるという情報もなければ、拠点にするという情報もない。

そもそも、そういう情報があれば、三人だけではないはずだ。



この不可解なことに、先ほど頭の中に流れてきた情報を加味する。


「もしかして・・・」


考えれば考えるほど、それはぼんやりとしていた輪郭がはっきりと浮かび上がってくる。

見上げると、木の枝が風に揺れていて、随分と騒々しい音を立てていた。


「・・・

穏やかじゃない・・・な」


そう呟き、僕は二人の元へと戻ることにした。
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