もしも明日もあったなら。

帰り道。
雨宮君が一方的に話すのを私は黙って聞いていた。
あ、もちろん相槌などは打つ。

「あ、せや。実陽ちゃん、明日委員会あるんやっけ?」

「うん、あるよ!」

「ほんなら、明日も帰ろ!」

「う…うん?いいよ?」

何で明日の約束をするんだろう。

「おっしゃ、おーきに!」

「あはは、逆に誘ってくれてありがとうね~」

そんな他愛もない話をしながら歩いていた。

「あ、実陽ちゃんってこのアーティスト好き?」

と、取り出されたのは一枚のCD。
なんとそれは私が欲しがっていたCDだった。

「え、あ、うん!すごい好き!!持ってるの?いいなー!」

つい興奮して早口になってしまった。

「そんな好きなんか?ほんなら、明日貸してあげるわ!」

今日じゃないんだ、というのは伏せておいた。
仮にも借りる側だしね。

にしても雨宮君、優しいな。

< 108 / 163 >

この作品をシェア

pagetop