もしも明日もあったなら。

*

弥生と一緒に保健室へ滑り込むと保健の澤先生がいた。

「こら。廊下は走っちゃいけないって…え!?実陽ちゃん、どうしたの!?」

最初は説教ムードだった先生も実陽の様子と僕らの表情を見て状況を察したらしい。

僕は簡潔に高梨から聞いたことを澤先生に伝えた。

「…わかったわ。じゃあ、実陽ちゃんは先生が見てるから、君達は戻っていいわよ」

そうですか、と下がろうとした時。

「おれ残ります」

弥生がそう言った。

僕も澤先生も驚きを隠せなかった。

「いや、弥生君。戻っていいのよ?次また授業でしょ?」

「そうだ。弥生。ここは先生に任せよう」

「おれは実陽が目覚ますまでいる」

こういう時の弥生は頑なとして意志を曲げない。

「はぁ…」

僕は思わず溜め息をついた。
澤先生が困り果てていると、保健室のドアが開いた。
体育教師の檪先生だった。

「すみません、澤先生。次の授業出てもらえませんか?」

「あ、でも…実陽ちゃん……」

仕方ない。

「澤先生。僕と弥生で花咲を見ておくので授業に出ていいですよ」

そう言うと先生は、

「わかった。二人に任せるわね。」

そう言って澤先生は檪先生と保健室を出ていった。


…はぁ。ノートをあとで高梨に借りるしかないな。
僕は一人授業について後悔していた。

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