心の裏側と素肌の境界線を越える為に
「痛い!」

思い切り俺の腕を握り締めながら、美佳は片桐の前から廊下に連れ出した。


「どうして!」

美佳は廊下に出ると、俺の腕を振り離し、

「昨日!携帯に出なかったのよ」

俺を睨み付けた。



「ああ〜」

俺は腕をさすりながら、昨日の夜のことを思い出していた。

「電源が切れたんだよ。悪かったな」

そう言うと、また教室に戻ろうとする俺の腕を、また掴んだ。

「留守電にも入れたのに…」

顔をふせ、呟くように言う美佳。

「聞いてない」

俺はもう、美佳を見てなかった。

教室内の片桐の方を向いていたから。
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