心の裏側と素肌の境界線を越える為に
「太一は…」

美佳は、腕から手を離した。

「おれのことなんて…どうでもいいんだね」

「え?」

震えるような美佳の口調に、俺は振り返った。

美佳の黒髪が、俯いている顔の表情を隠していたけど、全身が小刻みに震えているのが、わかった。

「中学の時は、優しかったのに…高校に入ったら、おれのことなんて!見向きもしない!」

顔を上げた美佳は、泣いていた。

「!?」

その顔に驚き、思わず動きが止まった俺の顔に、

美佳の拳が叩き込まれた。

「グーかよ」

首が跳ね返る程のパンチをくらって、俺はふらついた。

「太一の馬鹿!」

捨て台詞を残し、美佳は俺の前から消えた。
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