心の裏側と素肌の境界線を越える為に
俺は、片桐の華奢な体を抱き締めた。


「資格なんていうなよ。俺が、そうしたいんだから…。愛される資格なんてものは、誰にもないん
だ。ただ…自分じゃない誰かが、自分を好きになった…。それだけなんだ」

俺はもう一度、強く抱き締めた後、

「ただ…願うのは、片桐も俺をほんの少しだけでも…見てほしい」

俺は、片桐をゆっくりと離すと、彼女に微笑んだ。

「無理はしなくていい。ほんの少しつづでいい…」



俺の言葉に、片桐は泣きながら苦笑した。

「馬鹿ね。もっといい子が、いっぱいいるのに」


「いないよ。俺の心が、そう言っている」

俺は、できる限り…優しく微笑んだ。

壊れそうな彼女に…。

改めて…抱き締めて、気づいた。

彼女は…。

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