心の裏側と素肌の境界線を越える為に
壊れそうな程…傷付いている。


彼女の全身に走る傷口は、まるでひびのように、広がっている。

思い切り抱き締めたら、破片と化して…壊れそうだ。

普通なら、そう思うだろう。


でも、違う。

程度は低いかもしれないが、壊れかけた俺にはわかる。

逆なんだと。


壊れかけた心は、誰かに抱き締められて、

ぎゅっと抱き締められて、

傷口がくっ付き、さらに強い絆へと変わるのだ。

昨日の俺のように。




「でも…」

片桐はいきなり顔を伏せ、俺から離れようとする。

「誰かを好きになる…心がないの。多分、今は…」
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