心の裏側と素肌の境界線を越える為に
「そういう心を失っているの。離婚してから…」

片桐は、俺に背を向け、

「その前に…本当に好きだった人に、気付いたの。そして、あたしにした行為は、その人にすがることだった」


「…」

俺は、離れた片桐に手を伸ばせなかった。

片桐は笑い、

「こんなことになってから…自分を押し付けようとした。その人の好きな気持ちを利用して…」

片桐は俺を見ないように、振り向き、

「最低…だよね。だから、あたしは…その人からも、みんなからも、離れた」

頬から、涙が流れた。

「それが、誰も傷つけない…一番の方法だから」


そう言うと、片桐は俺にまた…背を向けた。





(ああ…そうか)


俺は納得した。

だからかと。
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