心の裏側と素肌の境界線を越える為に
「ねえ...太一」

片桐は、初めて俺の名前を呼び、

「このおばさん達、知ってるの?」

「え?」

「感じ悪いし…向こう行きましょうよ」

戸惑う俺を、強引にその場から移動させた。

「へえ〜彼女なんだ」

男は離れていく俺に、言った。

「今度は、若いのを捕まえたんだ。まあ〜せいぜい、フラレるなよ」

はははと笑う男に、俺が完全にキレ、襲いかかろうとした。

だけど、片桐がしっかりと俺の腕に掴んでいるから、動けない。


「馬鹿にするな!」

何とか腕を振りほどこうとする前に、片桐が叫んだ。

片桐は、男を睨みつけ、

「この人は、あんたなんかより、いい男よ!」

それだけ言うと、フンと前を向き、俺を引っ張って歩き出した。
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