心の裏側と素肌の境界線を越える為に
総司の言葉に、美佳は足を止めた。

「だって…だって…」

美佳は拳を握りしめ、

「仕方ないだろ!」

叫んだ。


「美佳…」

総司は、美佳の感情を感じ取り…動けなくなった。

「だって、仕方ないだろ!」

美佳は振り返った。

「おれと太一の間には、音楽しかなんだ!それしか…ないんだ!」

振り返った美佳は、泣いていた。


(ああ…)

総司は、何も言えなくなった。

走り去っていく美佳の背中に向かって、腕を伸ばすだけしかできなかった。


(僕は…何もできない…)


友達ではあるけど…それ以上ではない。

慰めることもできなかった。

ただ近くで、美佳が傷つくのを…見守っていただけだ。

影に隠れて…。

「馬鹿野郎…」

総司はその場で、項垂れた。
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