心の裏側と素肌の境界線を越える為に
「だってさ…仕方ないだろ」

俺は、総司から目をそらした。

「どうして…どうして!」

総司は瞳に涙を溜め、

「あんな闇を背負った女がいいだよ!」

また殴りかかってきた。

そんなことをする総司に驚きながらも、俺は簡単に避けた。

「闇?」

俺は眉を寄せた。

「あんな女!」

俺は、理解した。誰のことかを。

「総司!」

「太一!」

俺は、総司を睨み、

「それでも、俺は!好きになったんだよ」

今度はバランスを崩すことなく、総司は振り向きざま、腕を突きだした。

「自分の闇も拭えないのに!他人の闇まで、背負えるか!」

鬼のような形相で襲いかかる総司を見ていると、

俺は次第に切なくなってきた。

「総司…」

俺は避けることをやめ、総司の拳を手で受け止めた。

「昔の女のことを、引きずってる癖に!」

それでも、拳を押し込んで来る総司。

「…」

俺は、総司を見つめた。

総司の口から出た…本音は、正しかったんだろう。


だけど。
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