心の裏側と素肌の境界線を越える為に
だからと言って、変えさせる権利はない。


「結婚しても…働かせているんだ」

もういないかとも思っていたが、

ガラス越しの店内で見つけることができた。




「そうか…」

一つ目の軽い坂を登りきった時、

なんだろう…なんというか…

心がすっきりしていることに気付いた。


何だかんだいっても、元気ならそれでいい。

あんなに近かった唇も、今は別の色になっていた。


そんなことを考えるよりも、俺の目は坂から見える…鉄橋を見ていた。

その上を、電車が走っていた。


「片桐…」

俺の口から、言葉がこぼれた。

勿論…今の電車には乗っていない。

片桐を乗せた電車は、大分前に渡っているだろう。

なのに、片桐が帰る方向と同じ電車を見ると、

胸が切なくなった。
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