一週間、魔法使いになります。
「……そういえば、どこ行くの?」
するときょとんとした顔がこちらを振り向く。
「あれ? 言ってませんでしたっけ。
私がいる、こことは違う世界――――魔法界ですよ」
……え?
全身が凍りつくような感覚。
こことは違う世界? 嘘、やだ、そんなとこ行きたくないよ。
得体のしれない世界へ行くことに恐怖を感じていたけど、もうホウキはベランダから離れた空中だ。
もう、戻れない。
下を向いてしまうともっと怖くなってしまいそうで、しがみつくのに邪魔な顔を横に向け、目を閉じた。
「速度上げます。落ちないように気を付けて下さいね」
ただでさえ怖いあたしに容赦のない言葉がかけられる。
嘘でしょ……。
その言葉通り、二人を乗せたホウキがぐんと速度を上げたのを感じた。
さっきよりも速いスピードで前に進んでるのが感覚で分かる。
ジェットコースターで目を瞑(ツブ)るとより怖い、と聞いたことがあるけど、どうやら本当のようだ。
視覚が閉ざされると体で感じるしか情報がなくなり、聴覚も普段研ぎ澄まされる。
あたし、ジェットコースターいけるけど足元ないのは流石に不安定だな……。
あたしホウキに乗っている時に感じたのは、それで最後だった。