一週間、魔法使いになります。
★待っていた人は
気付けばテレビや写真でしか見たことのないような、とんでもなく大きなお城の前。
形はほぼ線対称で、高い塔が左右や奥に何本も建ってる。
一番下には見上げるほど大きな、トラックも軽々通れそうな門。門の前には軽い武装をした、見張りの男の人が二人いた。
城を囲むようにして造られている深い大きな溝に水が張られていて、ときたま風で水面がさざ波立つ。
高級感のある白い外壁や横に並んだ立派な窓にも目を奪われたけど、至る所に鏤(チリバ)められている赤く煌めく宝石が一際目立っていた。
『気付けば』っていうのは、いつの間にか意識がなくなっていたから。
どうやらホウキに乗っている途中に気を失ってしまったみたい。
意識が戻ってからミミさんに『柚葉さま落ちそうで大変だったんですからね﹏﹏!』ってぷんぷん言われた。
確かに飛びながら意識失ってるあたしに落ちないように気を遣うのは、すごく大変なことだと思う。
今ここにあたしがいるのはミミさんのお陰だ。
ところでこの世界はミミさん曰く、“魔法界”というところらしいんだけど……。
あまりあたしの住んでるところと変わったところが見当たらない。
こんな豪華なお城があるせいで雰囲気は勿論違うけど。
上を見上げれば青い空はあるし、眩しい太陽もちゃんとある。
空に変な生き物が飛んでることもないし、ドラゴンがいたりなんてこともない。