一週間、魔法使いになります。
あまりベタベタ触らないよう気を付けながら、カップに口を付けて冷たい紅茶を流し込んだ。
甘さと、ただ甘いだけじゃない爽やかな渋みが口の中をいっぱいにする。
うん、おいし〜い……。お城で飲む紅茶は貴族にでもなった気分を味あわせてくれるよ。
口の中が潤ったら、なんだかオシャレな鉄製のフォークを握って、ショートケーキの尖った部分を縦に切断した。
生クリームの程よい甘みやスポンジの柔らかさ、フォークによって切れた瑞々しい苺が、今まで食べた中で一番美味しいと言っても過言ではない美味しさを引き立ててる。
その驚きの美味しさがあたしのフォークを止まらせなくしていた。
やばい、このケーキ美味しすぎ……! 魔法かかってんじゃないのってくらい。
最近ショートケーキ食べてなかったから久しぶりだし、異世界来て良かったかも。
この部屋静かで嫌な雰囲気だから、あたし音立てるの嫌だったけどこのケーキを食べる為なら構わない。
今まであたしの座っているソファの横に立っていたミミさんが、「美味しいですか?」と突然尋ねてきた。
「うん、すっごく美味しい……!」
あたしが頷きながら答えると、ミミさんも嬉しそうに話しだす。
「この城では……お客様にとある決まったケーキを出さなければいけない決まりなんです。
でも女王さまは、人間の柚葉さまには人間界のケーキをお出ししなさい、とおっしゃって……」
ミミさんの言葉は古びた扉が開く音によって遮られた。