一週間、魔法使いになります。
少しこちらに体を傾けていたミミさんが、さっと元の姿勢に戻る気配がする。
それに習って、あたしも慌てて握っていたフォークを空になったお皿の上に置いた。
なんだか、そうしないといけないような雰囲気だった。
音の出所を見れば、さっきまで閉じられていた赤茶色い木の扉が開かれていて、そこからゆっくり歩いてくるのは女の人。
艶のある、真っ赤で長い髪はハーフアップにされていて、伸びている髪には緩いウェーブがかかって歩く度に揺れる。
割と白い肌に冴えるのは炎のような赤い瞳。
そんな赤い女の人が身につけているのは、胸のあたりに付けられている宝石が煌めき、フリルがふわっと膨らむ水色のドレスだ。
すご……っ。
驚くほどの美人さん!
それに結婚式とか行ったことないし、実際にドレスを見るのはこれが初めて。
出てきた女の人は、床まで付くドレスに慣れた足取りでソファの横まで歩いてきた。
そしてあたしに微笑みかける。
「こんにちは、柚葉ちゃん」
とても美しい笑顔だった。
優しさのこもった声は、口調のせいか、あまり想像していた“王の威厳”といったものは感じ取れない。
「こっ、こんちにはっ」
慌てて返事するも、緊張でガッチガチ。
うぅ、恥ずかしい……。
そんなあたしの様子を見てクスッと笑うと、女王さまはそんなに緊張しなくてもいいのよ、と言って向かいのソファに腰を下ろす。