一週間、魔法使いになります。



「――――柚葉ちゃんをルビーの王女にどうかしら?」



 女王さまの言葉を待っていたママの血相がガラリと変わった。

 まるでそんなママの反応を楽しむかのように、女王さまは妖しく微笑む。


 少し、女王さまが怖く感じられた。



「そんなの駄目よっ。私が許さないわ!」


「ええ、そう言われるのは想定内。そんな軽々と大事な一人娘を差し出すわけもないし、柚葉ちゃんだって、魔法界でいきなり暮らせなんて言われたって困ると思うの。
 
 けど、柚葉ちゃん。『体験』ならどう?」



 いきなり話を振られ、ぱちぱちと瞬きをしてから首を傾げる。



「え……。体験?」


「そう、『体験』。名付けるとしたら『一週間プリンセス体験』ね」



 体験、かぁ……。

 にっこり微笑まれながら言われ、想像してみるとなんだか楽しそうなものに感じられてくる。

 一週間の、不思議な謎に満ちた魔法界での生活……。きっとミラクルなことがたくさん起こるのだろう。

 なんか楽しそうだよ……! それならやってみたいかも!



「柚!」


 すかさずママの『やめなさい』という意味の込もった言葉が飛んでくる。

 それならやってみたい、と口に出す前に女王さまに心を読まれた。



「それならやってみたいって顔してるわね。是非来て、歓迎するわ」



 ……なんで分かったんだろう? 魔法かな……。


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