一週間、魔法使いになります。
「……だからさっきからなにっ?」
「……ネックレス」
か細く呟かれた言葉を拾えず、あたしは耳の横に手を添えて聞き返した。
「え!?」
「ネックレス。魔法界に行っても絶対に絶対に、外さないでね」
「ネックレスって……これのこと? だよね」
確認するようにあたしがジャージの下から取り出したのは、肌身離さず付けていたネックレス。
シンプルなデザインの中で瑠璃色の石が目を引いている。
まだあたしが小さい頃に、ママからお守りと貰ったものなんだ。
「うん、そう。このネックレスは柚を守ってくれるから……」
「大丈夫だって。今までもずっと付けてきたんだから今更外せないくらいだよ」
ママはどこか淋しそうに微笑むと、「明日なんだから早く支度しなさいよ」と言ってからリビングの扉を開ける。
部屋に入っていくその背中を見つめながら。
すっかり静かになった玄関で、掴めない状況に目を瞬かせた。