婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
それでは次の質問です、と言って私は小さく咳払いをする。

「葛城さんは食べ物で何が好き?」

「なんだそれ、合コンみたいだな」葛城は眉根を寄せる。

「考えてみたら私は結婚相手のことを何も知らないの。だからもっと良く知ろうかと思って」

「男女がお互いを解り合える、もっといい方法があるんじゃない?」

葛城はニヤリと不敵な笑みを浮かべ私の顎に手を添える。

きっとまたいやらしい事をしようとしているのだろう。

「ふざけないで、ちゃんと答えて。結婚する前にきちんと知っておきたいから」

私は毅然とした態度で言うと、全くその気がないと解ったのか葛城諦めたように手を引っ込めた。

「うーん…なんだろ。肉?とか?」意外と真面目に答えてくれる。

「何の肉?」

「強いて言えば鶏肉…かなぁ」

「意外と庶民的なのねぇ」私は思わず吹き出した。

「なんか感じ悪いな」葛城はちょっとムっとしている。

「わかった。じゃあ、鶏肉を使った料理が上手になるよう頑張るね」

「いじらしいこと言うじゃないか」葛城は私の肩に手を回そうとするがピシリと叩いてはねのける。

「はい、じゃあ次の質問です」

『好きも何も、結婚するんでしょう?』

私は師匠に言われた事をクソ真面目に実行し、芸能レポーターばりに葛城を質問攻めにした。

最後の方はお互い意識が朦朧としていたが、私は驚異の記憶力でそれを脳へと刻みつけた。

「じゃあ、葛城さん158個目の質問です」

「ごめん…遥もう無理」葛城は力なく言うとそのまま床に倒れ込む。

「だめ…葛城さん…もっと…ぐう」私もそのまま寝落ちした。


翌日

私の部屋で、行き倒れとなった葛城の姿と、空になった超高級ワインロマネコンティの空き瓶が発見された。

…運悪く葛城父によって

葛城がこっぴどく叱られた事はいうまでもない。
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