婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
シートに座り暫くすると、辺りが暗くなり映画が上映される。

じつは原作を既に小説で読んでいて内容は粗方わかっている。

館内は暗くて、空調も程良い感じ。私の瞼は徐々に重くなって行く。

そういえば昨日は緊張してあまり良く眠れなかった事を思い出し小さく欠伸をした。

そこで私の記憶は一旦途切れる。


大音響に驚き、ハッとして目を覚ます。

気がつけば、中谷先輩の肩に持たれかかっていた。

「す、すすいません!」慌てて頭を起こして小声でお詫びする。

「いつでもどうぞ」

恥ずかしさのあまり悲鳴を上げて逃げ出したいくらいだ。

映画では既に第一の殺人が行われた後だった。

その後も、ストーリーがイマイチ頭に入ってこなかった。


「どうだったー?」

映画館を出たところで感想を尋ねられる。

「原作を読んでたんですけど、トリックなどイメージしづらいところがあったのですが、実写化されると解り易いですね。でも枠内に話しを落とし込むので、端折られていたシーンがあったり、犯人の動機付けが雑だったりするところが気になるとこではありました。でも全体的には原作のイメージを崩さず良く作られていたのではないでしょうか」

「け、結構ちゃんと見てたんだね」少し驚いたように言う。

「ずっと寝ていた訳じゃないですよ」

そっか、と言って中谷先輩はクスリと微笑む。

今日は失敗ばかりしている。

きっと鈍臭い女だと思われているに違いない。
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