婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「お腹空いた?」

「実はポップコーン食べ過ぎちゃって…」

実は俺も、と言って中谷先輩は肩を竦めた。

「人生でこんなにポップコーンを食べたのは初めてかもしれない」

私達は目を合わせるとクスクス笑い合う。

「じゃあ、何か軽く食べて行こうか」

「焼肉は次回ですかねー」

何て言いつつ、さりげなく次の約束を取り付けようとする。

私達は同じビルの中にあるシャレオツな、スペイン料理屋さんに入る。

「お二人さまですか?」店員さんに尋ねらると、中谷先輩は「はい」と言ってこっくりと頷く。

「申し訳ございません、店内は大変混み合っているため、少々お待ちいただくようになりますが」

店内を見渡すと、確かに席は全て埋まっており、なかなか空きそうもない気配だ。

「どうしようか」中谷先輩が尋ねる。

「じゃあ、違う…」とこにしようか、言い掛けた時に「あら?!」という声が聞こえた。

振り向くとモデルのような美女が目を丸くして此方を見ている。

ダークブラウンの長い髪に大きな瞳、そして抜群のプロポーション…

こんな美人、一度見たら忘れるハズがない。

「あなた匠の後輩の子よね?!」

…絵梨だった。
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