婚約者は突然に～政略結婚までにしたい５つのこと～
「知り合い？」中谷先輩が尋ねる。

「葛城さんの彼女さんです」私がボソリと答えると「葛城の彼女？！」と、中谷先輩はギョッとしたように聞き返す。

絵梨は肯定する代わりに、ニッコリと花のような微笑みを浮かべた。

「あら？貴方も匠の知り合い？」

「はい、クラスメイトです」中谷先輩が答えると、まあ偶然！と言って絵梨は目を見張る。

「今、奥の席で匠と食事をしているの。もし席が空いていないようならご一緒しない？」

絵梨の脳天気な提案に背筋が凍る。

「いや、丁度私達はお店を移動しようって話してたとこだったので、ねえ？」中谷先輩に同意を求める。

「お邪魔じゃないですか？」

「全然！皆で食事した方が楽しいじゃない」絵梨は人懐っこい笑みを浮かべた。

「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうか」ニコリと爽やかに笑って言う。

まさかの中谷先輩の裏切りに私はお口あんぐり状態だ。

「俺たちが現れたらビックリするだろうなあ」

「うん、驚かせちゃお！」

何故か2人は楽しそうだ。

長身の中谷先輩と絵梨に両脇を挟まれ、捕らわれた宇宙人のような状態で席へと連行される。

葛城達の席はテラス席に面し、半個室のようになっていた。

「たくみー意外な人達とあっちゃったのよ」

じゃーん！と言って絵梨さんは私達を陽気に招き入れる。

「どーもー！こんばんは！」中谷さんは、トーク番組のゲストばりのテンションだ。

葛城は突然の招かざる客の登場に、一瞬ギョッとした表情を浮かべた。

が、すぐに笑顔で取り繕う。

「これはこれは、意外なお客さんだね」いつもの穏やかな口調で、ニッコリ笑う。
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