婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「二人は大学で知り合ったの?」絵梨が無邪気に尋ねる。

「いや、高校が一緒で同じテニス部だったんだ」

「へえ、それは知らなかったな」葛城が片眉をあげていう。

「だから大学で再会して驚いたよ」

大学まで追っかけてきた事を見抜かれやしないかと私はドギマギしてしまう。

「まさか、遥ちゃん、祐介くんの事を追っかけて東栄大学に入学したとか?」絵梨は冷やかすように言う。

図星を突かれて私の心臓は大きく飛び跳ねた。シャレにならないから辞めてほしい。

「ま…まさかー、それじゃあストーカーみたいじゃないすか」

私はアハハっと引きつった笑みを浮かべながらいう。

「そうだったら嬉しいけどね」

中谷先輩がニコリと微笑んだので私は思わず頬を染めた。

「遥ちゃんと瑞希ちゃんペアは学校でも結構人気あるんだよねえ葛城?」

中谷先輩が同意を求めると「それは知らなかったな」と葛城は肩を竦めていう。

「まあ、そうか。こんな綺麗な彼女がいたら他の女子は目に入らないだろうからね」

ちょっと含みのある言い方だけど、中谷先輩は爽やかにさらりと言うので他意はないのだろう。

「やだわー、祐介くんたら」絵梨も嬉しそうにしている。

「遥さんと佑介くんもお似合いよー、なんか可愛らしい二人って感じで、ねぇ!匠!」

おいおいおい、そこで葛城に振るんじゃねぇよ。

私は心の中で舌打ちする。

「そうだね、お似合いだよ」

葛城は微塵の動揺も見せる事なく二コリと笑う。

ああ、そうか。別に葛城さんは私と結婚出来ればそれでいいんだった。

中谷先輩と二人でいたって別に何も思わないよね。

何故か心の奥がチクリと痛む。

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