婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「見たよー、遥。初日から中谷さんと登校ですか」

席に着くなり隣に座った瑞希が目をキラキラさせて追求してきた。

「別にたまたま入り口で一緒になっただけだって」と言いつつ、ついニヤけてしまう。

「なになにー?話し聞かせてよ!」

話が盛り上がってきたところで教授教室へ入って来る。

瑞希の追求も一旦お預けだ。

授業に意識を向けようと思うものの、意識は別な所に飛んで行ってしまう。

結局、というか、いつものごとく、夏休みの間中、葛城から連絡は一切来る事はなかった。

軽井沢で二人の距離が縮まったと思っていたのは、どうやら私だけだったみたい。

魔のスクウェア会食の一件以来、私から連絡する勇気なんて勿論なくて「葛城リスト」が更新される事はなかった。

一方で中谷先輩とはちょくちょく連絡を取るようになり、夏休みのあいだにも何度か一緒に食事にも行った。

だけど、あの日以来、踏み込んだ会話は一切なくて、関係は保留状態のままである。

なんだか全てが宙ぶらりんのまま、気付けば夏休みは終わっていた。

どうしたもんかな。

私は頬づえをつきながら小さな溜息を吐いた
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