婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
体育の時間はバレーボールだった。

運動音痴の私は元バレー部主将であるクラスメイトのアタックを、顔面でモロに受ける。

「みぎゃっ!」

無様な悲鳴を上げて、床へ倒れ込む。

「ぎゃっ!遥大丈夫?!」

バレー部元主将のアヤが慌てて駆け寄る。

「だ、だいじょうぶ…」

フラフラ立ち上がると鼻からヌルリと生温かい液体が流れる。

手の甲で拭うと真っ赤な血がベットリとこびりついた。

大学生にもなって鼻血…最悪だ。

私は上を向いたまま、瑞希に付き添われ体育館から強制退場させられた。

一足先に授業からあがると、更衣室で着替えを済ませる。

「酷い有様」

鼻の頭も擦りむいていたので、瑞希がキティちゃんの絆創膏を貼ってくれた。

「この後デートでしょ?」

「多分…無理。こんな顔じゃ、一緒に外歩けないもん。事情を話して今日は帰る」

「まぁ、そうよねぇ。せめて香りだけでも女子力を高めて」

瑞希は同情を滲ませて言うと、イブサンローランのベイビードールを私に振りかけた。

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