婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
校内を歩いているとすれ違う人が頭の 絆創膏を見ているような気がして下を向いて歩く。

カフェテリアへ到着すると窓際に座る中谷先輩を発見した。

私は俯きながら気配を消して、テーブルの方へ歩いていく。

「中谷先輩」私が声を掛けると、ビクリと肩を痙攣させてこちらへ振り向いた。

「ああ、遥ちゃん、突然来たからビックリしたよ」

「驚かせてすみません」

私は鼻を見られないよう、あきらかに不自然な感じで下を向き、髪の毛で顔を隠す。

まるで貞子のようだ。

「とりあえず、座ったら?」

「いや、今日は体調が悪いのでこのまま帰ろうかと思います」

「どうかした?」不審がられてるのが顔を見なくても気配で伝わって来る。

「すみません。また後日、事情は話します」

私は絆創膏を見られないうちに、慌てて立ち去ろうとする。

が、一瞬早く中谷先輩が腕を掴んだ。

「調子悪いなら尚更送るでしょ」

私は驚いて思わず振り向いてしまう。

ああ…痛恨のミス…。

その結果、中谷先輩とモロに顔を見合わせることにななった。

「…ぶっ」私の絆創膏を見て中谷先輩は堪えきれず吹き出した。

「やっぱり笑ったー!」

私はあまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にする。

「ごめんごめん、まさかそう来るとは思わなくて」

中谷先輩はまだ笑っている、けど腕は離さない。

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