婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「もお、藤原さん、性悪男の物マネは止めてもらえますか?!」

しかし、藤原ではなく、正真正銘の性悪男がそこにいた。

「性悪男って、だれ?」葛城はニッコリと微笑む。

「…田中さん?」私は動揺してトンチンカンな答えを返す。

「小森ちゃん、バレーボールのアタックを顔面で受けちゃったから、ちょっと頭が飛んじゃってるのかもしれないな」

藤原はフォローにもならないフォローをする。

「大丈夫か?その顔面」葛城は私の顔を覗きこむとふんわりとフルーティーなコロンが香る。

ああ、この香り久しぶり…思わず胸がキュンとする。

「大丈夫です。顔面は強いので」

動揺しているのを悟られないよう言い返したけど、意味が解らない事を口走ってしまう。

「ああ、やっぱり強く頭を打ったみたいだね。今日はもう帰った方がいい」葛城は心配そうに眉根を寄せた。

これだけ笑われたのだから、言われなくても帰る。私はフンとそっぽを向いた。

「じゃあ、寄り道するなよ」葛城はフワリと私の頭を撫でる。

なによ、自分こそ帰る気満々じゃない。婚約者が怪我をしたというのに随分あっさりしたものね。

…別に全然気にしてないけけどね。

「なんだ、絵梨とデートか」

田中のKY発言で空気がピシっと固まる。

その場にいるメンバーがソロリと私に視線を向けてきた。

「相変わらず仲良しね。いってらっしゃい」私は二コリと可憐に微笑んだ…はず。
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