婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「では19世紀から20世紀にかけてイギリスの産業が衰退した理由を説明したまえ」

教授は底意地わるそうな笑みを浮かべてズレた眼鏡を人指し指でくいっとあげる。

「あー…えっと」全然聞いてなかった私は私はしどろもどろになる。

その時、隣に座った葛城がスッと手を上げた。

「国内人口や国土が少ないということが、まず原因として上げられるかと思いますが、それに加え技術の開発に資金をつぎ込んだことが原因と考えられます。それに比べ、ドイツやアメリカなどはイギリスで開発した技術を模倣したため開発資金がかからず、よりよい製品を作成することが出来たことが発展の理由となったのではないでしょうか」

「うん、素晴らしい。が、私は隣の女学生に尋ねたつもりだが?」

「申し訳ありません、僕が遅刻したので、講義を聞けなかった分を彼女に色々教えてもらっていたので」

まぁいいだろう、と言って教授は再び講義を再開した。

チラリと横に視線を向けると、葛城は何事もなかったように美しい文字でノートにメモを取っていく。

「あ、ありがとう、貴方」私は隣の瑞希にも聞こえないような小声で囁く。

「どういたしまして、奥さん」葛城は唇の端を上げて笑う。

不覚にも、その姿に私の胸は高鳴ってしまう。

ああ…移り気な私を神様どうかお許しください。心の中でそっと合掌した。
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