婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
高速道路を飛ばすと、あっと言う間に葛城邸へと到着した。

広大な敷地内を暫く走ると、木々の間から洋館が姿を現す。久しぶりだと圧倒的なデカさだ。

車をガレージに入れると、やたらと響き渡る玄関のベルを鳴らした。

重厚な木製の扉が軋みながら開き、中から轟さんが出迎えてくれた。

「これはこれは、お久しぶりです。遥さま」轟さんはニッコリと穏やかな笑みを浮かべる。

「ご無沙汰してます。轟さん」私はぺこりと頭を下げる。

轟さんはに案内され、葛城父と母の待つリビングへと向かう。

「いらっしゃい。よく来てくれたね」

葛城父と母はソファーから立ち上がり笑顔で出迎えてくれた。

険悪な雰囲気ではないので、どうやら悪い話しじゃないらしい。

ホッとして私も顔を綻ばせぺこりと頭を下げた。

「こんにちは、お久しぶりです」

「さあさ、掛けてちょうだい」

母に促され、私と葛城は並んで向かいの席に腰を下ろした。

そのタイミングを見計らったように、轟さんがテーブルの上にティーセットを用意してくれる。

「急にお呼びたてして悪かったね」葛城父は申し訳なさそうに言う。

「いいえ、どうせ暇だったので」

「匠も色々と忙しいようだからなぁ」笑顔で父が、チクリと牽制する。

「学生生活では日々学ぶ事も色々多いので」葛城は笑顔で交わす。

「そうか。社会に出てから学べない事も多々あるだろうからな。学生のうちにしっかり学んでおきなさい」

裏を返せば、チャラチャラ遊んでいるのも今のうち、というところだろうか。

「今日遥さんに来ていただいたのは、今後の事についてお話ししたいことがあったからなのよ」

葛城母がズバリ切り出した。心臓の鼓動が一気に早くなる。
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