婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「我が家に嫁ぐとなると、ただ家を守るだけではなくて色々なお付き合いもして行かなきゃいけなくなるの。特に匠は長男だから」

葛城母の話に、私は相槌を打ちながら神妙な顔で頷く。

「ところで遥さんは何カ国語話せるのかな?」

葛城父に尋ねられるが私はきょとんとする。

「日本語…くらいでしょうか」

「英語は?」

「writingとreadingでしたらある程度は出来ますが、speakingとhearingは、ほぼ出来ません」

私が正直に答えると、リビングはシンと静まりかえる。

あ、あれ?私変な事言ったかな、と少し焦ってしまう

「遥さん、ご趣味は?」葛城母が質問する。

「切手と記念貨幣の収集です」

私の返答を聞いた瞬間、葛城が口元を隠して吹き出した。

母は咎めるように長男に鋭い視線を向ける。

「好きな楽器とか?音楽はどうかしら」

「あまり音楽は聞かないですね。集中する時の妨げになるので。楽器もピアノを少し齧った程度です」

またもやリビングはシンとする。

…なんか不味そうな雰囲気だ。

「じゃあスポーツなんてどうかな?!」葛城父が気を取り直して明るく尋ねるが「遥は超がつくほどの運動音痴だ」と、葛城が即答した。

なんだかリビングの空気がさっきよりも一層重苦しくなる。

「やっぱり早めにお話しを聞いておいて正解だったようね」葛城母に同意するよう父もこっくりと頷いた。

勉強は出来ても、教養が全くない事が判明した今、私は「嫁失格」の烙印が押され、婚約が取りやめになるかもしれない…。

半分冗談で言っていた事が、現実味を帯びて来た。

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