婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「このベッドの中で何度も匠さんの事を考えたわ」

「…え」匠は猫のように目を真ん丸くして私をじっと見つめる。

「酷いこと言われて大っ嫌いって何度も思った。涙で枕を濡らした日もあったわ」

あ、そっちね、と言って匠さんは苦笑を浮かべる。

「こんな風に二人で一緒に眠る日が来るなんて、何だか不思議な気分」私はクスリと笑う。

「…悪かったよ、色々」

匠さんは再び天井の方を向き直しボソリと呟く。

「これからは大事にするから、奥さん」

匠さんは布団の下でキュッと手を握りしめる。

「こ、今度酷いことしたら家出してやる…」

感極まって涙ぐんでいるのを悟られないよう憎まれ口を叩く。

「…それは怖いな」

私は繋いだ手をギュッと握り返した。

人肌の暖かさが指先から伝わって来ると安心する。

私は手を繋いだまま緩々と眠りに堕ちて行った。

意識がなくなる前に「すきだよ、遥」と聞こえたのは私の夢だったのだろうか。



翌日

ぐーすか眠りこけていた私達は、轟さんがガラス戸を叩く音で目を覚ます。

匠さんがゴルフコンペに遅刻したのは言うまでもない。


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