婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「音符は読めるね?」
「い、一応」
「じゃあ、とりあえず弾いてみて。間違えてもいいから」
ピアノに触るなんて10年振りくらいだ。
私は鍵盤に指を置いたまま地蔵のように固まる。
「とりあえず、片手づつにしようか」いきなり両手は無理だと匠さんは判断したようだ。
私は片手でギクシャクとピアノを弾き始める。
「違う。4部音符に8分音符が2個続き最後に4部音符だから『タンタタタン』のリズムだろ?」
気を取り直して引き始まるが、すぐにつっかえてしまう。
「これは…アキコ並みに勘が鈍い…」匠さんは途中で頭を抱えてしまった。
私にも失礼だが、アキコさんも何気に失礼だ。
匠さんの柔らかな目は序々に吊りあがって行く。
あぁ…こうゆう目で見られるのは久しぶりだな、と思わずノスタルジックな気分に浸ってしまう。
「違う!そこは四部休符だろ?!さっきも言った筈だぞ?メモとれ!メモ!」
匠さんに怒鳴られながら結局1時間かけて左手と右手をようやく一回づつ通しで弾くことが出来た。
私もグッタリしているけど、それ以上に匠さんもグッタリしている。
「駄目だ…遥、こんな楽譜を選んだ俺が悪かった。バイエルから出直そう」
匠さんは唇の端を微かに上げて弱弱しく笑う。
「…はい」私はこっくり頷いた。
結局、自炊をする気にもなれず、匠さんと一緒に轟さんの用意してくれた夕飯を食べる。
心身ともに疲れた私達は終始無言でサクサクの天ぷらを食べる。
喧嘩でもしたのではないかと轟さんは心配するほどだ。
葛城に離れまで送ってもらう。
今朝は寝坊までさせた上に、これほど疲れさせては、さすがに今日は泊って欲しいと言える空気じゃなかった。
「い、一応」
「じゃあ、とりあえず弾いてみて。間違えてもいいから」
ピアノに触るなんて10年振りくらいだ。
私は鍵盤に指を置いたまま地蔵のように固まる。
「とりあえず、片手づつにしようか」いきなり両手は無理だと匠さんは判断したようだ。
私は片手でギクシャクとピアノを弾き始める。
「違う。4部音符に8分音符が2個続き最後に4部音符だから『タンタタタン』のリズムだろ?」
気を取り直して引き始まるが、すぐにつっかえてしまう。
「これは…アキコ並みに勘が鈍い…」匠さんは途中で頭を抱えてしまった。
私にも失礼だが、アキコさんも何気に失礼だ。
匠さんの柔らかな目は序々に吊りあがって行く。
あぁ…こうゆう目で見られるのは久しぶりだな、と思わずノスタルジックな気分に浸ってしまう。
「違う!そこは四部休符だろ?!さっきも言った筈だぞ?メモとれ!メモ!」
匠さんに怒鳴られながら結局1時間かけて左手と右手をようやく一回づつ通しで弾くことが出来た。
私もグッタリしているけど、それ以上に匠さんもグッタリしている。
「駄目だ…遥、こんな楽譜を選んだ俺が悪かった。バイエルから出直そう」
匠さんは唇の端を微かに上げて弱弱しく笑う。
「…はい」私はこっくり頷いた。
結局、自炊をする気にもなれず、匠さんと一緒に轟さんの用意してくれた夕飯を食べる。
心身ともに疲れた私達は終始無言でサクサクの天ぷらを食べる。
喧嘩でもしたのではないかと轟さんは心配するほどだ。
葛城に離れまで送ってもらう。
今朝は寝坊までさせた上に、これほど疲れさせては、さすがに今日は泊って欲しいと言える空気じゃなかった。