婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「匠は?」藤原が尋ねる。

「今飲み物を取って来てくれてるわ」

「じゃあ、今のうちに、だな」と言って藤原は私の腕を引っ張ってソファから立ち上がらせる。

肩に手を置いてグイッと引き寄せるとチュッと唇にキスをした。

「happy birthday!」藤原はニッコリほほ笑みながら言う。

「ギャ―――――っ!!!」私は大音量に負けないくらいの絶叫をする。

「お前!普通口にするか!?信じられない!俺がそれをするのにどれ程の勇気がいったかわかるか?!」

佑介さんがぷりぷり怒っていっているが「え?キスって口にするんじゃないの?」と、藤原はケロリと言い放つ。

「な、な、な、なんなんなんですか?!なんでみんな私にキスするんですか?!」

私は真っ赤になって抗議する。

「なんかねー二十歳の誕生日にしてもらったキスの数だけその後の人生に幸運が訪れるんですってー。北欧では古くからある言い伝えらしいわよ」瑞希が顎に人差し指を当てて説明してくれる。

「そ、そうなんですか?」迷信深い私は思わず食いついてしまった。

「ってな訳で今日は主役の遥にみんなでキスするってことになったのよ!」

はぁ?と言って私は腑に落ちない顔で小首を傾げる。

なんだか、ありがたいんだか、ありがたくないんだか…。

「そんな訳で、だ」田中に腕を掴まれてくるりと正面に向き直される。顎に長い指を添えて上を向かされると、おデコにチュッとキスされた。

「おめでとう、遥」長い睫毛に縁どられた切れ長の瞳がスッと綻ぶ。

こ、これは凄い破壊力だわ…私は思わずクラリとしてしまう。

キス祭り…悪くない…悪くないわ。
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