婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「匠さん…まだ性懲りもなく…!」

私が怒りでワナワナと震えていると、まーまーまーと言って、瑞希が止めに入った。

「葛城さんがアパレルショップの女と浮気していることは一旦置いておいて、ここはひとつ皆で乾杯しようよ」

…イマイチフォローになってない。

許せない…私にはあんな誠実そうな素振りを見せておきながら、まだ!他の女とチャラチャラ遊んでいるなんて…

心の中では嫉妬の怒りがグツグツと煮えたぎっていたものの、雰囲気を壊さないようそっと蓋を閉じておく。

きっと後で大爆発するだろうけど。

「じゃ、じゃあ、とりあえず乾杯しようか」匠さんはグラスに赤ワインを注ぐ。

「では遥の20歳の誕生日を祝して」葛城がグラスを宙にかざす。「乾杯!」という声と共に一斉にグラスを合わせた。


お酒が程良く回ってきたのか、私は徐々にいい気分になってきた。

店内に流れる軽快な音楽も、なんだか心地よい。

しかも右隣には匠さん、左隣に藤原を侍らせて私は人生のうちで最高の誕生日を満喫していた。

「遥!匠の好きなプレイを教えてあげようか?」藤原がニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。

「ぷれい?好きな遊びって事?」

私の切り返しに周囲は爆笑する。

「ちょっと耳かして」

藤原は私の肩に手を回し耳元に顔を近づける。

匠が好きなプレ…と藤原が言いかけたところで「遥、そろそろフロアの方に行こうか」と言って匠さんは腕を引っ張り自分の方へ引きよせた。

「たくみー、主役を独り占めにするもりか?無粋なやつだな」田中が抗議する。

「来てくれたみんなにご挨拶しにいくんだよ。主役なんだから」

匠さんは他所行きの笑みを浮かべる。

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