婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「ひゃっ!」よろめいた拍子に、カウンターでお酒を飲んでいた女性にぶつかってしまった。

「す、すみません」私は慌てて頭を下げる。

「大丈夫?」女性はブラウンヘアをなびかせてこちらに振り向く。

目があった瞬間、互いに顔を見つめ合いビシりと固まる。

まさかの…絵梨…

シンプルの黒いTシャツにストライプのハイウエストのタイトスカートを履き、惜しげもなく見事な脚線美を披露している。

「お久しぶりね」

絵梨は腰に手を当てて仁王立ちし、チビの私を見下ろしてた。

「お、お久しぶりです…」

…何で絵梨が此処にいるのよ。

ま…まさか、修羅場の再来…?パーティーの借りはパーティーで返すつもりだろうか。

私はおずおずと絵梨を見上げた。

「相変わらず、清純派全開でムカつくわ」絵梨はいきなり無礼をかましてきた。

「スタイルの良さを誇示するような派手な服装もムカつきます」私は負けじと言い返す。

絵梨は私の方へ鋭い視線を向ける。そのまま腕を伸ばしてきて肩を掴まれた。

ま、また殴られる?!

私は思わずギュと目を閉じて身体を強張らせる。

絵梨は両頬を手で挟むと、そこで唇にまさかのキス。

突然の出来事に私はビシりと固まった。

「happy birthday to haruka」

さすが帰国子女、素晴らしい発音だ。

「な、なんのつもりですか?」

突然の出来事に私は目を白黒させる。

「パーティーでは、殴って悪かったわ…それと、その、ありがと」

「…はぁ?」

私は何故お礼を言われるのか解らずキョトンとする。

「おかげで大恥かかなくてすんだ」

絵梨はバツが悪そうにそうに目を伏せた。

「ま、嘘ついてたあなたも悪かったけどね」

「嘘はついてません。でも、婚約のことを黙っていたのは…悪いと思ってますけど…」

絵梨はフッと笑い表情を綻ばせる。
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