婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「遥、はるか!」

肩を揺すられて目を覚ます。

「ふあ?」 ゆっくり瞼を持ち上げるとコロニアル風のお屋敷が目に映った。

私は手の甲目をこすり、クワッと欠伸をする。

どうやら誕生日パーリーから帰る途中、車の中ですっかり眠りこけてたらしい。

「ありがとうございました」

ぼんやりとした意識のまま、寡黙な運転主川上さんに頭を下げて車から降りていく。

外に出ると、ほんのり花の香りがする春の夜気を吸い込んでググッと伸びをした。

「送るよ」

「大丈夫です。すぐ近くだし」

「随分ドライだね」と言って匠さんは片眉をくいっと上げる。

だって、これ以上一緒にいるとなんだか離れがたくなってしまいそうで。

私は匠さんの手をギュッと握りしめる。

「匠さん…今日は泊まっていく?」

「いかない」

即お断りさせてしまい、私は「だよね」と言ってシュンと肩を落とした。

「たまには遥がうちに泊まりに来てよ」

思わぬ台詞に私はキョトンとして匠さんを見つめる。

「私が?泊まりに行ってもいいの?」

匠さんは微笑みながらこっくり頷く。

「よかったらお風呂もうちで入ったら?」

気の利いた提案に私はパアッと顔を輝かせてた。

「もちろん行く!」私は嬉しくてデレっと頬を緩めると匠さんの腕にぶら下がるようにしがみついた。

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