婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
そこは一面大理石風のタイルが貼られており、洗面台のスペースとお風呂のスペースがガラスで区切られている。

浴槽は広々とした楕円の形をしており、 既にたっぷりとお湯が張られていた。

直ぐ側にある窓からはお湯に浸かりながら敷地の緑が臨める…ようになっている。今は夜なので真っ暗だけど。

「とっても広い!これなら2人で入っても余裕がありますね!」

私は素敵なバスルームに目をキラキラと輝かせる。

「随分積極的だね」

匠さんは苦笑いを浮かべる。

「いや!も、物の例えですよ!」

私はカアっと頬を赤く染める。

「せっかくのお誘いは嬉しいけど、俺は部屋のお風呂を使わせてもらうね。遥はゆっくりお風呂を楽しむといいよ」

匠さんはニコリと澄ました笑みを浮かべる

「だ、だから誘ってないですって!」

私はムキになって抗議をするが匠さんは聞き流す。

「バスタオルとタオルは洗面台の下に入ってるから適当に使って。使用後はランドリーボックスの中に入れておいてくれればいいから」

じゃ、ごゆっくりー、と言って匠さんはバスルームから出ていった。


「ふう…」

お湯につかると思わずだらしない溜息が口をついて出る。

ジャグジーのスイッチを入れると、ぶくぶくとお湯が吹き出してきた。

「わーお!」

思わず感嘆の声をあげる。

パーティーの後に広くて綺麗なお風呂に入れるなんて夢みたい。

私はゆったりとお湯に身を沈める。

これでシャンパンでもあればあれば映画に出てくるワンシーンみたいだ。

思わず笑みが零れてしまう。

女優気分でゴージャスなお風呂を楽しんでいるうちに、すっかり長湯になってしまった。

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