婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
ルームウェアに着替え髪を乾かし準備を整えると、荷物を纏めて匠さんの部屋へ向かった。

扉をノックするが返事はない。

お風呂かな。

失礼しまーす、と言いながらそろりと部屋に入るとベッドに横になっている匠さんが目に入った。

そろりとベッドまで歩み寄る。

匠さんを覗き込むと目を瞑り健やかな寝息をたいてていた。

ま、まさかの寝落ち…?

ホッとしたような、ガッカリしたような複雑な気分だ。

私はベッドに腰を下ろしてマジマジとその寝姿を眺めてみる。

葛城の寝顔は子どもみたいに無防備だ。

可愛い。

私は指先で髪をそっと撫でる。

「サラサラだ」私は思わず頬を緩ませた。

そのまま指を這わせてそっと頬を撫でてみる。

栄養が行き届いているのか、男のくせにスベスベしてる。

長い睫毛に覆われたアーモンドアイとスラリと高い鼻。

「燁子さんとそっくり」

そして、口角の上がった唇をそっと指先でなぞる。

私は身を屈めると、そっと唇を重ねた。

久しぶりに味わう暖かくて柔らかい唇の感触に思わずゾクリとする。

思わずうっとりしていると不意に身体を抱きしめられた。

反射的に身体を引き離そうとするが長い腕に押さえつけられ、そのままベッドに組み敷かれる。

匠さんは私を上から見下ろしニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「お、お、起きてたの?!」

私は真っ赤になって抗議する。

「頭を撫でられたあたりからね」

匠さんは悪びれることなくケロリと言う。

私が恥ずかしさのあまり憮然としいると機嫌をとるように匠さんはチュっと啄ばむようなキスをした。

「誕生日にキスされた数だけ幸せが訪れるんだろ?」

それはオーナーの作り話しなんだけど…

ドキドキし過ぎてそんな事言える状態じゃない。
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