婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
私は飲み終わった缶をゴミ箱に捨てると競歩選手さながら早歩きで教えられた2号館の245号室へと向かう。

東栄大学のキャンパスは広いので何度も迷いかけた。

ようやく見つけた245号室の前に辿り着いた時にはすっかり息が上がってしまった。

「おっしゃっ」呼吸を整えて、気合いを入れる。

ノックすると「どうぞ」と返答があった。

「失礼します」私はドアを開けて中に入った瞬間、フリーズする。

部屋の中央に置かれたソファーに葛城はゆったりと座っていた。

…ミニスカートを履いた女の子を膝に載っけて…。

「おや、意外なお客さんだね」

しかも動じてる気配はゼロ。

「お取り込み中、失礼しました」

私は赤くなり、部屋から出て行こうとするが「なに?話しがあって来たんだろ?」と後ろから声を掛けられ引き止められる。

「でもお取り込み中だし」私は遠慮がちに言う。

「構わないよ、ねえ?」

葛城は膝に乗っている女性の長い髪をそっと指で梳きながら言う。

女はクスクスと笑っていた。完全に私をナメている。

生涯賃金3億円!

自分に言い聞かせ腹を括った。

「じゃあ、手短にお話しします」私は葛城の方へ向き直した。

「結婚のお話しですが、謹んでお受けさせていただきます」私は深々と頭を下げる。

「パパとママときちんとお話ししたみたいだね」

「私には勿体無さ過ぎるお話しだと思いました」

葛城はクスリと笑みを浮かべる。

なんたる屈辱…

女と堂々といちゃついてる相手に自分から嫁に貰ってくれ、なんて頭を下げなきゃいけないなんて。
こいつも、ほんっと意地悪!悪趣味!最低!

双子達の姿を思い浮かべて、必死で涙を堪えた。
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