婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「でも、休みの時は帰って来てね」

遥は眉根を寄せて心細そうな表情で言う。

「もちろん、遥も大学が長期休みの時はニューヨークへ遊びに来るといい」

「…バイト頑張る」

「旅費ならいくらでも出すから」俺はクスリと笑って相変わらず頑なな遥の頭にキスをする。

遥は細い腕を腰に回してしがみつく。

これはきっと仲良くしたい、という合図に違いない。

「風呂にも入った。歯も磨いた。だからキスしていい?」

「待ってるって言ったじゃない」

お許しを得た俺はそのまま遥を組敷いて唇を塞いだ。

最近キスに慣れてきたのか、誘うように舌を絡めると、答えるように絡め返してくる。

俺はそれが嬉しくて仕方ない。

滑らかな首筋に唇を這わせていくと、遥は喉をのけぞらした。

そのまま鎖骨のくぼみにキスをして少し強めに吸いつくと、抜けるような白い肌に赤い花びらのような後がつく。

遥は俺のものだ、とゆう印。

こんなもの、いくらつけたところで離れてしまえば直ぐに消えてしまうだろう。

だけど付けづにはいられない。遥を抱くたびに何度も同じ場所に口付ける。

高校生みたいだな…いや、高校生の弟だってこんな子どもじみた真似はしないかもしれない。

恥ずかしいから服で隠れるところにしてるけどね。

ルームウェアをするする脱がせていくと、遥の雪のような肌が露わになる。

「今日は定番の薄ピンクか」

俺がすかさずランジェリーをチェックすると「ご期待に添えずごめんなさい」と言って、遥はいじましい胸を両手でクロスして隠す。

「大した問題ではない。どうせすぐ脱がす」

俺は遥の背中にするりと手を伸ばし、ホックを外した。

「ちょっと!たく…」異議申し立てようとしたが、その前にキスで唇を塞ぎ遥の小さな身体を抱きしめた。

ああ、やっぱり、夕飯をたくさん食べておいてよかったな、と改めて思う。



調教するつもりでいたが、どうやら俺の方が調教されたみたいだ。

愛しい婚約者の柔らかい唇を味わいつつ、頭の片隅でそんな事をぼんやりと考えた。
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