婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「まったくあのハゲ、本当に腹立つわー」

私はハンバーグにブスリと箸を突き立てた。

本社ビルB1階にある社員食堂で同じ部署の同期3人が集まりランチを食べる。

ここでお互い仕事の愚痴を言い合うのが日課である。

「斉藤さんのこと?」

同期の一人芦原裕美が小首を傾げて尋ねる。

ふんわりコテで巻かれたロングヘアーに大きな瞳。

いつもお洒落な服を着こなし都会的な美人である。

「そそ、今日も電話取り次ごうとしたら怒鳴られてムカついたわ。ハゲのくせに」

私は大口を開けてハンバーグを食べる。

「そこハゲは関係なくない?」

もう一人の同期、瀧本香織がケラケラ笑って突っ込んだ。

ショートヘアーに人懐っこい笑顔がキュートだ。

「関係あるよー!ハゲのくせに凶暴だからお金あっても結婚できないんじゃん」私はフンと鼻を鳴らす。

「あーでも、シンガポールに彼女いるらしいよ?」

「ええ?!」ユミの発言に、私と香織は目を剥いた。

「やっぱり金か」香織は眉間に皺を寄せる。

「お金は大事よー」ユミはニッコリと艶やかな笑みを浮かべた。


…と、まあ、厳しいけどやりがいの職場と気の置けない同期に囲まれて、葛城商事でそれなりに充実した日々を過ごしている。
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