婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
大学在籍時、匠さんが帰えってくる気配は一向になかったので、卒業と同時に嫁に行くのは諦めた。

特に卒業後にする事も決まってなかった私は、周囲の雰囲気に流されて就職活動に勤しんでいた。

ある日、リクルートスーツを着て合同説明会から帰宅したところでたまたま葛城父と遭遇した。

私が就職活動をしている事を話すと「遥さんを他所にはやれない」と言って、葛城商事の採用がその場で決定したのだ。

社長直々のスペシャルコネ入社だ。

まさか匠さんよりも私が先に葛城商事で働く事になるとは…


贅沢を言えば、繊維や海外ブランドを取り扱う華やかなアパレル部門が良かったけど、私が配属されたのはバリバリの体育会系縦社会である男くさーいマテリアル部門だった。

勿論、私が社長の義娘に当たることは上層部の一部の人しか知らない。

だからハゲの斉藤さんも容赦ない仕打ちをしてくる。

私が狭量じゃなかった事をあの男は感謝すべきだ。

仲良しの同期2人にも私が社長の息子の婚約者だと言ったら、何となく壁が出来てしまいそうな気がして話せずにいる。

そこは心苦しいところではあるが、とにかく私は特別扱いされる事が嫌なのだ。
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