婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「いいじゃん!美味しいご飯とお酒を奢ってもらえばー。それで総さまの気が済んでお手伝いが免除されれば、まさに一石二鳥!」

ユミは大きな瞳でジッと私を見つめた。

「いやあ、だって彼氏いるもん」

『婚約者』だとリアルじゃないので、敢えて彼氏と言う。

「いやアメリカじゃん。バレないっしょ!」香織は微塵も悪びれずに言う。

「バレるとかバレないとかの問題じゃない。気持ちの問題よ」

「うわーでたーお堅い発言」香織ッハっと鼻で笑う。ユミも呆れ顔だ。

「そもそも、アメリカの彼とは全然会ってないんでしょー。最後に会ったのはいつ?」

香織の質問に私は即答出来なかった。

直ぐには思い出せないほど会っていなかったからだ。

アメリカに行ってから暫くは、私が会いに行くか、匠さんが帰国するかして会う時間を作るようにしていたけど、ここ何年かはお互い仕事が忙しくてなかなか予定が合わない。

やっぱりアメリカは色んな意味で遠かった。

「確かお正月かな…」しかも去年の…とはさすがに言えなかった。

「半年は経ってないんだ」

「そおねえ」香織の追求を曖昧に受け流す。

「じゃあ、連絡は取ってるの?」香織は芸能レポーターばりに質問を続ける。

「週1…2くらいかなー。彼は仕事が忙しいし、時差もあるから」

ホントは月1、2回くらいだけど見栄を張って盛ってみる。

2人は眉根を寄せてイマイチ納得いかないような表情だ。

「でもさー彼氏は遥の事を放っておいてる訳じゃん。だったら総さまとデートくらいしたって別にいいと思うよ。向こうもアメリカで絶対楽しくやってるって」

…確かに。ナイスバディな美女たちと戯れる匠さんの姿が容易に想像がつく。

香織の意見に反論できなかった。

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