婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「葛城さん…何してるんですか?」突然の登場に動揺し私はつっけんどんに言う。

今日の葛城は珍しくデニムを履き、白シャツにネイビーのジャケットを合わせている。

悔しいけど、爽やかでやっぱり素敵。

「この後、稜と駆と待ち合わせしてるんだ」

っげ…早く帰ろう。

苦手な2人組の名前を聞いて私は早々に立ち上がろうとするが、腕を捕まえられる。

「遥、髪切った?」葛城は顔を近づけて覗き込んで来たので思わず身構えてしまった。

私をじっと見つめたまま髪をさらりと撫でる。

「うん、可愛くなった」

葛城がにっこり微笑むと、私は頬を真っ赤にして俯いた。

「ねえ、瑞樹ちゃん、コレから遥借りていい?」

「ええーダメです!まだお買い物行くんですから!」瑞希は頬を膨らませる。

「これ、あげるから」葛城は胸からチケットを取り出した。

「叙々苑のペアお食事券!」瑞希の瞳がキラリと光る。

「これで決まり、だね」葛城と瑞希は二人でニッコリ笑い合う。

「じゃあ遥、また学校でね」なんて言って瑞希はご機嫌に手を振っている。

変わり身早すぎだろ?!

「わ、わたしもまだ買い物したい」私も抗議してみる。

「俺とすればいいじゃん」葛城は手を繋いで強引に引っ張っていく。

「貴方と?!」

「約束まで時間あるから」暇つぶしかよ!

私は半ばひきづられるようにして連れて行かれた。
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