婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
都内某セレクトショップ

「如何でしょうか」

試着室から出てきた私にお洒落な男性の店員さんが尋ねる。

私はワンショルダーのワンピースを身に纏っているが、完璧にブカブカだ。

本来セクシーなハズのこの服も、私が着ると修行僧の袈裟のように見えるから不思議である。

「うーん…」

葛城はあまりの似合わなさに言葉を失っている。

次に着た赤いワンピースは完全に服に着られていた。言うまでもなく胸元はブカブカ。

「う、うーん…」

葛城はまたもや黙り込む。

今度は個性的な黒のジャンプスーツををチョイスするが、小学生のようになってしまった。

「ちょっと…俺の好みで選ぶと遥にはあわないみたいだな」

葛城は白旗を挙げた。

男性の店員さんと相談しながら、七分袖のニットワンピースを選ぶ。

色はスモーキーブルーで、履いて来た黒のショートブーツを合わせるとなかなか大人っぽい仕上がりだ。

試着室から出ると、葛城は「悪くない」と言ってこっくり頷いた。

よかった、合格のようだ。
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