婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「お客様、お着替えの方はいかがでしょうか」

ドアをノックして店員さんが声を掛けてくる。

葛城はようやく唇を解放すると忌々しいそうに舌打ちする。

あれ…キャラが変わってる…

くるりと後ろを振り向き、ドアを開ける。

「よく似合ってたから、これも買うよ」

淡いピンク色のニットを先ほどのお洒落な店員さんに手渡した。

「ありがとうございます」店員さんはニッコリと微笑んだ。

2人で試着室に入っていた上に、真っ赤な顔をして壁に寄りかかった私を見て、瞬時に全てを悟られただろう。

ああ…穴があったら入りたい。
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