婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
学食で一人求人誌を片手にカレーを食べている。

「お、純潔女」…この呼び方は

眉間に皺を寄せて振り向くと、田中がラーメンの器を持って立っていた。

「隣いい?」こちらの返事を聞かずにドカッと隣に腰を下ろす。

「一人?珍しいわね」

「駆と匠はデートだってよ」

「あっそ、一人あぶれて残念ね」と相槌を打ちながら再び求人誌に目を落す。

「遥こそ、グラマーな友達はどうしたんだよ」

「瑞希も彼氏とデートだって」私はカレーを一口食べる。

「そっか、じゃあ俺とデートするか」田中は無表情のまま言う。きっと彼なりの冗談なのだろう。

「お断りしますー」私はサラリと流した。

「バイトでも探してんのか?」田中はラーメンを食べながら、求人誌に視線を向ける。

「うん、夏は色々物入りだから」

「匠から小遣いでも貰ったら?どうせ結婚するんだし」

他の女とデートしている婚約者から小遣い貰うのもどうかと思う。

「結婚したらそうなるかもしれないけど、自分でどうにか出来るうちは小遣いくらい自分で稼ぐわよ」

「立派な心掛けだな、遥」何故か田中は上から目線だ。

「そりゃ、どうも」私は肩を竦めていう。

「そういや、学校の近くのカフェでバイト募集してたぞ」

思わぬところで耳よりな情報を得る事ができた。田中も邪険にするもんじゃない。
< 37 / 288 >

この作品をシェア

pagetop