婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「おお!来たな?!ツチノコシスターズ」

オーナーである、藤原氏がカウンターの前に立ち、ニヤニヤ笑って私達を出迎えた。

「やめてくれません?妙な呼び名を私達につけるのは」尋英さんは鼻の頭に皺を寄せて言う。

「まぁまぁ、いいじゃないか。親しみを込めて呼んでるんだ」藤原氏はハハっと笑い飛ばす。

「ところで、調子はどうだ?ツチノコ妹!」何故か私は『ツチノコ妹』という奇妙なあだ名を付けられてしまった。

「遥ちゃんは頑張って働いてくれてますよ?オーナー」店長の沙織さんが代わって答えてくれた。

そうかそうか、偉いな、と言って藤原氏は大きな手のひらでグリグリと私の頭を撫でた。

中身は完全なおっさんだけど、藤原氏は滅茶苦茶男前である。

長めの髪を後ろに流し、キリっとした眉毛に大きな瞳、鼻は高く、掘りの深い顔立ちをしている。

背も高くて、いつもお洒落だ。今日もホワイトジーンズに同じく真っ白なTシャツを合わせてネイビーのジャケットを羽織っている。尋英さんと並ぶとファッション雑誌の1コマみたい。

何故かSAKUは美男美女揃いなので委縮してしまう。

「すみませーん」その時、客席から声が掛かった。

「ホラ、ツチノコ妹、行って来い!」藤原に促されてお客さまへの元へ向かう。
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