婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
18:00ちょっと過ぎ

オーナーの予告通りお店に若い男性がやってきた。

「いらっしゃいませ」たまたま、私はカウンター近くにいたので笑顔でお出迎えする。

オーナーが言ってた『沙織さんのお気に入り』ってこの人の事かな。

私は不躾にもジロジロと観察する。

仕立てのよいスーツを着ていて一見すると好青年であることには間違いない。

背はそんなに高い方ではないけど、細身の身体の上に小さな顔が乗っかっている。

ふんわりとした長めの茶色い髪を後ろにながし、鳶色のまあるい目が印象的な可愛らしい人だった。

「最近入った子?」男の人はニコリと微笑んだ。笑顔もまたキュートである。

「はい、先月から」

「へえ、初々しくてカワイイね」…でもちょっと軽薄そうだ。沙織さんのお気に入りは違う人かもしれない。

私は笑顔で受け流し、軽い人を眺めのよい窓際のテーブルへと案内した。

カウンターに戻り、お冷とおしぼり、メニューを用意して持っていこうとしたが「私が行くわ」と沙織さんに声を掛けられた。

やっぱり軽い人は沙織さんのお気に入りなのかもしれない。

すぐ後ろの席のが空いたので後片付けを装い二人の様子を近くで観察することにした。
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