婚約者は突然に~政略結婚までにしたい5つのこと~
「今日は元気ないじゃない」

仕事からあがり、ロッカー室で着替えていると沙織さんに声を掛けられた。

また婚約者と揉めたとは言い辛かったので、テストの出来が悪くて、と嘘をつく。

「そう、大変だったわね。テストお疲れ様」沙織さんは二コリと笑う。

沙織さんがボタンを外し制服のYシャツをスルリと脱ぐと、ふっくらと丸見を帯びたバストが露わになる。

体つきは華奢なのに、ちゃんと出るとこ出てるのよね。

私はその姿を凝視する。

「ど、どうかした?」見過ぎだったのか沙織さんは居心地悪そうに言う。

「ああ、すみません」私は誤魔化すように慌ててYシャツを脱いだ。小学生から進歩のない自分の胸を見ると本当にガッカリする。セクシーとは程遠い。

「あの今日来てた茶色いふんわりした髪の男性って沙織さんの彼ですか」私服のTシャツに袖を通しながら私は尋ねる。

突然のぶっこみに、沙織さんは動揺して頬を赤く染めた。「違うわよ」と言って肩を竦める。

「親密そうだったので気に入なっちゃいました」

「聞かれちゃった?」沙織さんはバツが悪そうに言う。

「ええ、バッチリ」

「オーナーにはナイショにしててね。冷やかしてきてウザいから」

思い浮かべただけでウンザリするのか沙織さんは眉を潜めた。

もちろん、と言って私はクスクス笑う。私同様、オーナーの詮索好きには沙織さんも辟易してるみたい。
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